オナシスとピカソが被った帽子
 

若いころから帽子を集めるのが趣味で、一時は相当数持っていましたが、その名残で今も50〜60個は持っているでしょうか。この帽子の原型はギリシャの下級船員が被っていた帽子です。40年ほど前、あの海運王・オナシスがギリシャの下級船員の帽子を、おもしろがって彼ったんですね。それが当時のヨーロッパの文化人の間でたちまち流行って、ピカソも被っていました。形もいいし、世界一の金持ちが、さりげなく下級船員の帽子を被るのがイキだなあと思って、ギリシャに行ったときに買って帰りました。そのうちに、どうしても自分のブランドでこの帽子を作りたくなって、試作品として作ったのがこの帽子です。しかし、当時は誰も帽子には見向きもしない。これからはデニムの時代が来ると先取りして、デニム地で作ったんですが:・・:。結局は商品になりませんでしたので、たったひとつしかない、僕の宝物になってしまいました。これは余談ですが、デニムの先取りといえば、30年ほど前、ソニーの盛田さんがアメリカに行かれたときに、「カッコいい洋服を作ってくれ」と頼まれまして、デニム地のタキシードを作ってさしあげましたが、ニューヨークでもの凄く受けたと大変喜んでいただいたことを覚えています。
このデニムの帽子は、今では僕のトレードマークみたいなもの。同じ形の帽子で、革、ツイードなど五〜六個持っていますが、出かけるときは必ずこれを手にしてしまう。前を少しクシヤッとひしゃげて被るとカッコいいんですよ。

株式会社プレジデント社
2001.4.30号 プレジデント
男の逸品 紳士のこだわり 第26回
オナシスとピカソが被った「帽子」より
(文章写真とも出典)