天津乗馬倶楽部
 
謙介が中国で楽しんでいたスポーツは乗馬だった。
他には、たまにテニスをしたり、野球をやったりするくらいのことだった。
天津の乗馬クラブは英国式で、街はずれにあり、紳士競馬と称して誠に優雅なものだったそうだ。
大川洋行にも馬術部があり、大川照雄始め乗馬好きの連中が週末に楽しんでいた。謙介は一度スピード・レースに出て2着になったが、これには裏話がある。
ある時知り合いの人に競馬へ誘われ、謙介は「じゃ、馬に乗るんだな」と思い、英国式の乗馬服に乗馬ブーツ、ウィップを特って出かけたのだが、実は誘ってくれた人は、馬券を買いに行こうという
意味だったのだ。しかし謙介は元来、ギャンブル趣味を全くもたない。その時はせっかく来だのだからとレースに出場したら、なんと2位になってしまったといういきさつ。
そのレースが大穴となって大騒ぎしたかどうか、そんなことは知らない、と謙介は笑う。