昭和34年TAKE IVYに先駆けて

MEN'SCLUB「男の服飾」第18集。1960年(昭和35年)春の号の表紙は、その前年、石津謙介がニューヨーク、プリンストン大学で撮影したアイビーリーガーの写真が使われている。
その号には「石津謙介世界の服飾めぐり」が46頁にわたって、特集として掲載されている。

その前年1959年(昭和34年)の秋、謙介は2ヶ月に及ぶ欧米ファッション視察旅行をしている。
行程は南回りでマニラ、ローマ、スイス、パリ、ロンドン、ストックホルム、ハンブルグ、フランクフルト、デュッセルドルフ、ニューヨーク、ナイヤガラ、ニューオリンズ、ロスアンジェルス、サンフランシスコ、ハワイと、欧米のほとんど全てを網羅した大旅行だった。

38頁から始まるこの特集には「●本誌特派 石津謙介」とあるから、当然婦人画報社からのバックアップもあったことだろう。
また海外に進出しつつあった日本の繊維企業や商社の現地での協力や援助にも頼ったことだろうが、それにしても今上天皇が美智子妃殿下とご成婚された年、まだ海外旅行は一般庶民には夢のまた夢だった昭和34年に、2ヶ月に及ぶ大旅行をするというのは大変なことだ。費用(1ドル360円、しかも大学出の初任給は8千円程度)や、連絡手段(手紙か電話かテレックスしかない)を考えても並大抵の冒険ではない。